「伝える」と「伝わる」の間にある壁
- 楳溪浩二 CG create

- 11月12日
- 読了時間: 2分
今日は、数年前に申請業務のみを担当したお客様のもとを訪ねた。相談は「部屋の音漏れ」で、これは適切な防音処理で解決できる見込みだ。しかし、何気なく尋ねた「他に気になるところはありますか?」という質問から、改めて建築という仕事の難しさを感じる時間になった。
「この柱、こんなに邪魔になるとは思わなかった」「白い床はきれいだけど、こんなに汚れやすいとは知らなかった」
お客様はそう語られた。そして最後に、「あなた方設計士は図面を見れば理解できるけど、私たち素人には分からないのよ」と静かに言われた。
その言葉が胸に刺さった。私たちは“伝えたつもり”になっている。一方でお客様は、“信頼している設計士だからきっと理想を叶えてくれる”と信じている。そのすれ違いが、完成後の「こんなはずじゃなかった」を生んでしまう。
私はその瞬間、自分の営業力不足を痛感した。もし私が掲げている「3DCG設計」や「VRプレゼン」を導入していれば、建物の空間や質感を“感じながら確認する”ことができ、このようなトラブルはほとんど起こらなかったはずだ。
図面や言葉では伝わらない“空間の温度”や“暮らしの感覚”を、設計の段階で共有する。それが、これからの建築士に求められる姿だと思う。
建築の目的は、建物をつくることではなく、「人の理想の暮らしを形にすること」。そのために私は、これからも“伝える”の先にある“感じてもらう設計”を追求していきたい。


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