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お客さんとのミーティング。テーマは「キッチン周りを使いやすくしたい」。

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「上の収納を取って、新しいのにして」「真ん中に壁をつけて、その真ん中にパネルを入れて」「で、そのパネルを両側から使いたいの」「でも壁は開放的にしたいから、上の方はギュッてしたいのよね」

……。

正直なところ、その時点で僕の頭の中には完成形がまったく浮かんでいなかった。

なので素直に言った。「すみません、ちょっと僕の理解が及ばないので」

そこで、その場でパースを描く。手を動かしながら、線を引く。

「そう!そう!こんな感じ!!」

言葉では、なかなか通じない。いや、通じている“つもり”になっているだけのことが多い。そして、その「つもり」が、後になってトラブルになる。

新築の打ち合わせでよくある光景。議事録を取り、内容を確認し、最後にお客さんからハンコをもらう。

あれ、何のためにやっているか知っていますか?

お客さんのためではありません。施工業者(つまり自分)を守るためです。

後でクレームになった時に、「ほら、ここに書いてありますよね」「確認して、ハンコも押してますよね」と言うためだけの書類。

もちろん、必要な行為ではある。でも、それより前にもっと力を入れなければいけない部分があるはずです。

言葉を重ねることより、理解を確認すること。書類を整えることより、完成形を共有すること。

図面やパースは、責任逃れの道具じゃない。共通認識をつくるための道具です。

だから僕は、分からない時は分からないと言う。そして、その場で描く。

「伝える」ではなく、「一緒に見る」。

これが、僕の建築のやり方です。

 
 
 

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